イントロダクション
2018年あけましておめでとうございます。メンバーの平尾です。
年明け早々、始まりましたヨカンリサーチというこのコーナー。
初回ということで、まずは簡単にコーナーの説明から始めたいと思います。
ヨカンリサーチは、毎回ひとつお題を立て、それに関連するデータを眺めながら、日本のこれからをあれこれ「ヨカン」してみようという試みです。
この、「データを眺めながら」というのが当コーナーの肝心なところです。
なぜなら時代は常に揺れ動きますが、データは事実を教えてくれるからです。
現代の日本社会は、とにかく前を向いて突き進めばそれで万事順調だった「成長時代」から、もうこれ以上は進めないから今あるものでうまいやり方を見つけようという「成熟時代」へと180度シフトチェンジしていく、戦後最大の転換期だと言われます。
こうした変化の激しい時期は人間も国も不安になるのか、国家財政が破綻するとか子供がいなくなるとか地方は消滅するとか、巷ではさまざま悲観的な声も耳にします。あるいは一方で、まあ生きていれば何とかなるさとそれを楽観的に笑い飛ばす人もいます。
要は未来のことは誰にもわかりません。それが時代の変わり目となればなおさらです。
わからないのであればもういっそのこと開き直って、「来るもんは来る。来たときに受けて立ちゃええ。」(※)とドンと構えて自分の目の前だけに集中する、というのもひとつの手だと思います。
しかしこの姿勢を良しとせず、ほっといても勝手にやって来るものをあえて待たず、むしろこちらから向かっていってやろう、という心意気がこの『ヨカンデザインプロジェクト』なわけですが、自分たちの経験や直感を信じつつも、漠然とした不安や淡い期待あるいはどこかで見聞きした憶測や噂ではなく、「データ」という事実の分析と解釈から議論をスタートすれば、もう少しそのひとつひとつの「ヨカン」を具体的な形へとみんなで展開していけるんじゃないか、そしてあわよくば未来の選択肢を少しづつても増やしていけるんじゃないか、と考えています。
またここで言う、「みんな」は現プロジェクトメンバーだけでなく、出来る限り多くの人を含んだ「みんな」であったら良いなと勝手ながら思っています。
と、少し大仰な出だしとなりましたが、つまりは面白そうなデータをみんなで囲み、そこから見えてくる社会的イシューについてワイワイと話し合い、これからの自分たちの活動に繋がるようなヒントを見つけていこう、という「ノリ」がこのコーナーの趣旨です。
またこのコーナーの書き手(私)も正当な訓練を積んだ分析官というわけではないので、その辺は割り引いて読んでいただき、その分いろいろと自由に発想していけたらなと思います。
ですので毎回ここで、「こうなるはずだ」とか「こうであるべきだ」といった、わかりやすい結論に辿り着くことは目指していません。
データそれ自体は単なる事実であって、そこに「意味」を見いだすのは読み手の仕事であるのと同じように、このコーナーもまずは事実確認の場となって、そこから読み手(そして書き手も)が何かしらの思考を広げていくキッカケとなればと考えています。
なにはともあれ、まずは第1回目を始めていきたいと思います。
※『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(J. K. ローリング, 2000/訳:松岡佑子)より引用(ヴォルデモート卿の再来を不安視するハリー達に対するハグリッドのセリフを一部抜粋)
日本人口動態
「国の将来ビジョンを描く際、まず把握しておかなければならないのは人口動態である。産業政策、国土政策、雇用政策、社会保証政策など、あらゆる政策は将来人口の行く末によって大きく左右される。」(増田寛也, 2014)
これは、「全国1,800の半分にあたる896の市町村が、2040年までに消滅しますよ。」という大変ショッキングな報告を行い、そしてご丁寧にもその896の市町村(消滅可能性都市)のリストを巻末に付け添えて当時物議を醸した『地方消滅』(通称「増田レポート」)という一冊の本の書き出しです。
この本の主張に対してはその後、小田切徳美氏の『農山村は消滅しない』(2014)や山下祐介氏の『地方消滅の罠』(2014)などによって建設的な反論がなされていますが、それはさておいて、この出だしの一節にはなるほどと頷けます。
また昨今、「コミュニティ・デザイン」という言葉が良く聞かれるかと思います。
この言葉の背景にはそれ以前の開発拡大主義的な、ありていに言えば非人間的な、地域づくりに対する反動があるのだと思いますが、つまりは現場レベルのまちづくりにおいても「人」や「人の繋がり」を中心テーマと考えることは、もはや常識でしょう。
ということでヨカンリサーチ初回は、社会を洞察するためのこの王道たる視点、「人口」あるいは「人」に着目したいと思います。
今回は、1950年から2065年までの日本の人口動態の推移データを持ってきました。上のグラフです。これは内閣府の「将来推計人口でみる50年後の日本」から拝借したものです(※1)。
いきなり話しがそれますが、日本政府各府庁のサイトに潜ってみると本当にさまざまな種類のデータがあります。最近ですと2015年に流行りのビッグデータを集約した『RESAS』(地域経済分析システム)が開設されました(※2)。
※RESASサイトより
これは各地域の活性化に政府所有のデータを役立ててもらおうと創設されたものですが、一般にもかなりの部分オープンされており、非常にお手軽にそして行政サイトとは思えないほどビジュアライズに(サイトを開くといきなり花火が上がります)、日本の産業構造や人口の動態・分布を見ることができます。これは単に眺めているだけでも楽しいです。
グラフに話しを戻します。
これを見たひとまずの個人的感想は、「あ、本当に人って減っていくんだな。」というものでした。身も蓋もありませんが。
「人口減少社会の到来」と言われて随分経ちますが、実際にそれが始まったのは2009年です。なんと実はもう、10年近くも前からとなります(※3)。
2016年以降は推計値ですが、2050年には今から2000万人減って1億人を切るそうです。2000万人というと、鳥取県、島根県、高知県3県の現人口合計より少し多いくらい(!)ですので、ああこれは本当に国のあり方がこれから自分が生きている間に、根底から変わるのだなと実感させてくれるグラフです(※4)。
もう少し詳しく中身を見てみます。
次に注目したいのはグラフ全体を右上がりに横切る赤い曲線、これは「高齢化率(65歳以上人口割合)」です。
これは一体どこまで上がるのだろうと思い、2110年までの推計値が載っているデータも参照したのですが、どうやらこの「高齢化率」は40%あたりで頭打ちとなるようです(※5)。そして「生産年齢人口(15~64歳)」は50%、「年少人口」10%でそれぞれ安定していきます。
ということは、2050年以後の日本で10人集まればその内、おじいちゃんおばあちゃんが4人、大人が5人、子供が1人というのが定常状態となります。ちなみに2000年時点ではこれが2人、6人、2人といった塩梅でした。
今ここで確認したのは、一周回って逆に最近あまり聞かなくなった「少子高齢化社会」という言葉の内実です。
例えば遥か昔、1950年を見ると「高齢化率」は5%を切っています。ひょっとするとこの時代では、おじいちゃんやおばあちゃんはむしろ「珍しい」という認識だったのかもしれません。この時代の巣鴨はどのような風景だったのか気になります。
人が減る、特に若い人が減る、というのはまずは印象として悲しいものがありますが、今を生きる個々人にとって具体的にこの現象は何を意味するのでしょうか?
これを考える上で、ひとつに「一人あたり」という視点があります。
例えば昔は1人のご老人を20人で支えていました。しかし今では1人を3人で支えなければならない時代です。これは社会保障費増大の問題と関連してきます。しかしこれを逆から考えてみると、現代は1人の子供を10人で育てていける環境であります。
あるいは、近年各地域のまちづくりのキーとなっている「空き家」「空き地」の増加、または走行車数に比して多すぎる車線など、国民一人あたりの空間は年々大きくなっています。これをどう使っていくかでどうやら自分たちの生活の質は変わりそうです。
ということで次回はこの続き、「一人あたり」という視点を軸に、特にその「コスト」と「資源」の分配という観点から、人が減るということがどう自分たちに影響するかを見ていきたいと思います。
本当は初回内でそこまで行きたかったのですが、1つのグラフだけでこの量なので一旦ここで区切らせてもらえればと。
ヨカンリサーチでは、毎回このくらいのボリュームで、前後とテーマを繋げたり繋げなかったりしながら、これからも2週間に1回くらいのペースで投稿する予定です。
気長に続けていければと思っておりますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
<参照>
※1 内閣府「将来推計人口でみる50年後の日本」
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2013/zenbun/s1_1_1_02.html
※2 ひと・まち・しごと創生本部事務局「RESAS(地域経済分析システム)」
https://resas.go.jp/#/13/13101
※3 増田克也. 2014. 「地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減」, pp1. 中公新書
※4 総務省統計局「人口統計(平成28年10月1日現在)」
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/index.htm
※5 厚生労働省白書 「人口減少社会を考える」
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/backdata/01-00-01-002.html
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