はじめまして。メンバーの平尾です。
リレーコラムの3人目としてバトンが回ってきました。ここまでプロジェクトの設立経緯(石川さん)、活動方針(友渕さん)と続いていますが、私はこのプロジェクトに参加する動機となった自身の中のヨカンのようなものについて書きたいと思います。個人的な話しで恐縮です。
私の専門は都市経営です。都市経営とは、経済・経営または商業・流通といった視点からまちづくりを考える分野です。2017年の頭まではイギリス・ロンドンで修士学生をしつつ「BID(=Business Improvement District)」というエリアマネジメント制度について調査をしていました。今は日本に帰ってきてロンドンに加えメルボルンの都市政策を研究しています。
なので普段は割合、華々しい大都市の事例たちと向き合っているわけですが、そこにもやもやとした違和感を持っていました。
特にその違和感がよりハッキリしてきたのは、日本へ帰国後いくつかの地方都市でロンドンで学んだことを行政職員、研究者、そして一般の市民の方に向けて講演回りをしていたときです。何と言いますか、実際にみなさんの前で話しているとだんだん虚しくなってくるんですよね。つまり「ロンドンでどれだけ上手くいってるか知らないが、こんな何十分の1の規模のまちに本当に適用できるものなのかよ。」という聴衆からの心の声が聞こえてくるようで。というか自分自身がそう疑問に思えてならなくなってくるわけですが。
一方近年、海外の都市事例からそのまちづくり手法を学ぶというのがちょっとしたブームです。ポートランドを皮切りに、バルセロナ、ドイツやフランスの地方都市などの都市政策・都市開発の紹介本が本屋さんに行くたびに増えていくかのようです。かく言う私も今まさにロンドンとメルボルンの本を執筆中です。
「都市」そして「大都市」は目立つ存在です。そこではヒト・モノ・カネ、あるいは経済、文化、歴史、流行、情報など、さまざまな要素が一手に集まり常に激しく動態しています。なので自分も含め大勢の人がそうした存在に目を向けますし本になれば売れます。
しかし注意しないといけないのは、それらの都市が自身の成長・維持のために用いている個別の手段・手法は、そもそもその地域に上に並べたような有形無形の資源が豊富に備わっているからこそ選択可能、という場合がとても多いということです。そこにあるのは普遍解ではなくあくまで個別解です。
第1回目のリレーコラムで石川さんが言っているように、またこのプロジェクトの出発点でもありますが、日本はすでに人口減少社会時代すなわち縮小社会時代に突入しています。東京ですら、2025年から人口減少が始まるとの予測です。
そんな慎ましく進んでいく社会にいながらこうした力のある地域のあり方から何か学ぶことは、例えれば自分の手元にはスコップしかないのにシャベルカーの動かし方を学んでいるようなものではないか、というのが自分の持っていた違和感です。
とは言えもちろん、上手くいっている地域の手法を表面的に知るだけでなく、そこにある構造を抽出し自分たちのまちづくりに活かしていくということは十分可能かつ有効な手段だと思います(だからこそ本書いています)。ただ、そのためには海外の都市事例を知るのとは別に、日本で進むこの縮小社会とは何者か、そして各地域はどのような状況にあるのか、ということを今自分がいる研究分野からはみ出して見にいく必要があるな、でもどうしよっかな、大変だな、と思っていたところに前回のコラム執筆者の友渕さんから声をかけてもらい、これは!と思いプロジェクトに参加しました。
ということで、自分は世界の都市事例と日本の縮小地域を繋ぐ、言わば変換器のような役割を果たしていったら良いのかなと考えています。と言いますか今書いていてそう思いました。
以上、長々とプロジェクトへの私の参加のきっかけを書かせていただきましたが、最後に自身が担当する「ヨカンリサーチ」について少し紹介をさせていただいて終わりたいと思います。このサイトのコーナーのひとつです。
詳しくは同コーナーの第1回冒頭に書いたのですが、これは「ちゃんと事実(データ)に基づいて議論しようぜ。」というものです。このプロジェクトは「ヨカン=予感」つまり自分たちの社会に対する直感がスタートですが、そこから具体的な将来の選択肢を検討していく上で、「事実に基づいて」というのはひとつ大切なポイントではないかと考えています。
ポピュリズムよろしく、「気分」の共有は慣性の法則に従ってどこまでも続きますが、いわゆる「建設的な議論」のためには「事実」の共有がまずは必要なのではないかと。
と書くと大げさですが、つまり毎回ひとつお題を立てて、データを1つ2つ持って来てあれこれ気軽に話すというコーナーです。2週間に1回投稿、6投稿で1クールという枠で、まず第1クールでは「人口減少」をテーマにそこに関わってくる資源、お金、家族、居住、働き方、結婚、などなどのトピックについてこれから書いていく予定でおります。
このコーナーを通して、半分は自分たちの予感の裏付けを、もう半分は新しい発見をしていけたらいいのかなと個人的には考えています。お勉強な感じではなく、ブログチックなテイストで書いてますので気が向いたときにでもお気軽にお読みいただければ幸いです。
次回は、『ケンチクイラストレーター』として活動する『イスナデザイン』の野口理沙子さんです!
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